2014年7月31日木曜日

SAM MCGUIRE インタビュー by JENKEM

JENKEMに載ってた、SAM MCGUIREというフォトグラファーのインタビューです。

ついに業界内でカミングアウトする人が現れました。これに続くプロはいるのでしょうか。

ともかく、良い友達がいて良かったね〜!と思います。

元記事:http://www.jenkemmag.com/home/2014/06/17/an-interview-with-skateboardings-gayest-photographer-sam-mcguire/

JENKEM:http://www.jenkemmag.com/home/


photo: sam mcguire

長年スケート業界でフォトグラファーとして働き、また何年もの間、自分がゲイであるという事実にもがき苦しんでいたサムは、一つの結論に達していた。それはこの二つの世界は、共存できないということ。

スケートボーディングは伝統的に、性的な指向については閉鎖的な考え方のままだ。現在でもゲイであることを公にしているプロスケーターは一人もいない。こういった状況から、サムは脱け出したかった。彼は30歳になったらスケート業界を去り、Facebook上でカミングアウトして、ゲイ差別のないアイスランドで暮らすという計画を立てていた。

そしてサムは先週30歳になったんだが、彼はその計画を実行しなかったことを、ここに喜びと共に報告したい。彼は計画を実行する代わりに、カミングアウトをし、自分の苦労を世界中の人々と共有することに決めた。以下はそんなサムの話だ。




君はしばらくスケート業界でフォトグラファーとして働いているよね。カミングアウトしようと決心したのはいつ?

2年前に、もう限界だってところまできてた時期があった。本当に辛い二重生活を送ってたんだ。その頃僕にははデートしている相手がいたんだけど、人前では喋り方とかを変えて本来の自分を隠す必要があった。でも僕は嘘をつくのは得意じゃないんだ。だんだんと、何人かの人たちに打ち明けるようになった。僕の知り合いたちは(自分がゲイだってことを)気にしないみたいだったから、それで多分僕は自信がついたんだと思う。スケートの世界は狭いからね、もし5人の人に打ち明けたら、その人たちがまた別の5人に話す。そうやって広まれば簡単だと思ったんだ。

本当のターニングポイントは、フォトグラファーのOliver Bartonから電話をもらったときだよ。彼のおかげで僕はスケートの写真を撮るようになったといっても過言じゃないんだけど、幸運なことに僕は彼とは長い付き合いで、良き友達同士になった。ある日彼と(電話で)話しているときに、彼から直球でこう聞かれたんだよ。「辛いんだろ?」ってね。それで僕は「何が…?」って聞き返した。彼は「辛いんだろ?誰にだったら打ち明けられるのか、それを見極めないといけないと思ってる?」って聞いてきた。僕は「どういう意味?」って聞き返した。そしたら「おいおい、俺は君が抱えているものが何か分かってるよ」って言われたんだ。そのとき僕は車を運転してたんだけど、車を路肩に停めて泣き崩れてしまった。


photo: sam mcguire

それまで誰一人として、僕にそう聞いてくれる人はいなかった。その頃の僕はどうにもならなくなってて、ゲイであることにもがき苦しんでいたんだ。勘違いしないでよ、僕には素晴らしい友達たちがいるよ。ただ、これはセンシティブなことだからさ。彼は僕に手を差し伸べてくれて、僕の肩にのしかかっていた重荷を取り除いてくれた最初の人だった。それに当時の僕は健康でもなかったから、誰かに「大丈夫?」って言ってもらえたのは、なんと言うか、人生が変わったような感じだった。

僕はそこで多分30分はずっと泣いていたと思う。まるで誰かが死んだみたいにね。あんまりドラマチックにしたくはないけど、でも確かに僕の中の一部分はそこで死んだんだ。もしかしたら自分は幸せになれるのかもしれないと感じた。長い間、僕は惨めで、怯えていて、自分が何かを出来るとは考えられなかった。そんな時に人から電話をもらって、そんなことを言ってもらえた…。本気で死ぬことを考えていたし、自分は永遠に幸せにはなれないだろうと思っていた。でも、もしかしたらスケートボーディングはみんなが思っているように同性愛者に対して偏見を持っている世界じゃないかもしれない、と考えられるようになったんだ。一度みんなを信じてみようと思った。その時、「そうだ、オリバーが電話をくれて大丈夫だよって言ってくれたんだ。今更何を恐れる必要があるんだ?」って思ったんだ。

何をそんなに恐れてたの?最悪な悪夢的な状況ってどんなもの?



本当に正直に話すと、自分の周りの人たちが、ゲイの人たちについてかなりエグいことを言っている場にいたことが何度かあったんだ。だから最悪のシナリオは、そこで自分がブチ切れちゃって結果ボコボコにされること、だね。ほとんどの場合、ただ単にみんな馬鹿話をしているだけだったけどね。以前そういうことを言ってた人たちも、実際はものすごくサポートしてくれたし。ただ当時はこわかったんだ。そういう場にいて、そして周りの人たちがどういう反応をするのか、全く見当がつかなかったからね。

前に一度旅先でこういうことがあった。僕たちのホスト役をしてくれた人が冗談で、みんなに向かってゲイについてのジョークを飛ばしてたんだ。「ふん、ここにいる奴らはみんなゲイじゃないって知ってるけど、もし誰かがゲイだって言うなら俺はそいつをボッコボコにしてやるぜ」なんてね。ただの冗談だから大げさな話にはしたくないけど、でも実際にそうやってゲイであることが理由で暴行された人の話をニュースやなんかで聞いてるから、本当に怖かった。最近はもちろんそんなことないけど、正直言ってちょっとビビってた。

そのときの旅は、思い返してみるとなかなか面白かったよ。みんなに(自分がゲイだってのが)バレるのが怖くて、ポルノサイトすら見ることができなかった。もしかしたらインターネットのルーターから、僕がチェックしたウェブサイトの履歴をチェックできるかもしれない、って真剣に考えたよ。ものすごくクレイジーに聞こえるかもしれないけど、当時は現実的な恐怖だった。だからCNNしか見ないでいたほうが良いって考えてた。

photo: sam mcguire

スケートボーディングは他のスポーツなんかと比べて、同性愛者に対する偏見は強いと思う?

他のスポーツはほとんどがチームでやるものだから少し複雑だけど、その質問に簡単に答えるなら、そうは思わないよ。スケートをするのに、わざわざ他の人にもスケートを始めてもらう必要はないけど、他のスポーツだと、一人でやるのはとても難しい。フットボールは自分一人じゃできない。だからもしフットボールをやる人間が町中で君一人で、しかも君がゲイの人を嫌ってたとしたら、ちょっと終了だよね。でも、もしスケートをする人間が町中で君だけだったとしても、スケートはできる。ただ孤独なだけさ。僕が思うに、スケートはスケートであるが故に、より忍耐が必要とされるものだと思うんだ。ストリートでは毎日いろんなタイプの人たちに遭うし、対処しないといけない。それに(スケートは)ちょっと不安定なスポーツだし、僕たちはみんなちょっと変わってる。プロですら、置いてけぼりにされたように感じることがある。大手メーカーからプロモデルのシューズを出してるプロですら、(自分の立場に)不安を感じることがあるんだ。スケートボーディングは(他のスポーツよりも)、世間からのはみ出し者との親和性は高いと思う。


photo: sam mcguire

どうしてスケーターや業界で働く人たちは、そんなに不安を抱えてるんだと思う?

奇妙な業界だからね、物事はものすごい早さで変わって行くし。多くの人は大金を稼いだりできないし、予期せぬ出来事が起こりうる。例えばSean Malto。彼はナイキからのサポートを受けて、自分の怪我をうまくマーケティングのキャンペーンに使ってもらえたけど(訳注:ステアでミスって足首を思いっきり捻ってしまったらしい)、彼は本当にラッキーだよ。他の人だったら膝をダメにしちゃったらそれで終了だからね。

NFL(アメリカン・フットボール)の契約がどうなっているのか分からないけど、選手がもし怪我をしてしまったら別の契約に移行して、最低でもリーグが保証している最低賃金は得ることができるみたいだね。でもスケートだと、そうはいかない。スケーターが怪我をして半年も経てば、スポンサーたちは一体どうなってるんだと思い始める。なんでこいつに給料を払ってるんだってね。ニューカマーたちが後ろには控えていて、そのポジションを狙ってしのぎを削ってる。競争だよ。それはほんの一時の間にすぎないかもしれないけど、そういったことが不安な環境を作り出しているんだ。

それに、これは誰も否定しないと思うんだけど、スケート業界はとても狭くて全て繋がってるから、ときどき噂話好きの集まりみたいになる。そういったことも不安な状況を作りだす要因だね。例えばDylan Riederなんか、彼はファッションがすごく独自だし、ドラマティックなVネックシャツやチーム・ハンサムのバイブスを持ってるから、みんなそこばかりに目を向けて悪口を言ってる。誰も彼のスケーティングの凄さなんて気にせずにね。

Dylanがただ指にリングを4つはめてるからって馬鹿にされるような、そういう状況で、誰がカミングアウトなんてしたいと思う?彼はスケーターなんだから、ただスケートさせればいいじゃないか。Lebron James(NBAの選手)が私生活で何をしようと誰も何も言わないよ。誰もLebron Jamesのことを逐一チェックしたりしない。もしそんなことになったら、バスケットボールも(スケートみたいに)より不安定なものになり始めると思う。

photo: sam mcguire

一緒にいると気分が悪くなるっていうのが理由で、特定の仕事やスケートのクルーから距離を置いた時期ってある?

そうだね…正直僕のほぼ全キャリアを通してそんな感じだよ。これはもっと、他人と僕との個人的な関係の話だと思うけど。だってスケートボーディングでは、一緒に働いてる人たちとすごく良い友達になりやすいからね。エディターとフォトエディターみたいにさ。…長年すごく苦しんだよ。間違いなく僕はそういうことと向き合ってきたけど、きっとそうした経験は、人と一緒にいるときに変な感じにならないようにしたり、より良い関係性を作るのに役立ったと思う。

ツアーのときに、もう本当に気分が悪くて立ち去りたくなったことが一度だけある。僕らが夕食をとっているとき、その場にたまたま沢山のゲイの人たちや、ドラッグクイーン、オカマたちがいたんだけど、僕たちのクルーの一人が特に、(ゲイの人たちに対する)自分の考えを声に出して言っていたんだ。それで僕は外に出て、電話をしているフリをして、なんと言うか、隠れた。最終的に他の何人かが彼を咎めたんだけど、それでそいつはキレちゃって、先にツアーから立ち去ってしまった。僕が本当にその場から逃れる必要があると感じたのは、そのときだけだね。

photo: sam mcguire

公の場で、ゲイであることを言いふらされたことってある?

前にMaltoがこっちに来てるとき、West HollywoodでSammy Winterのプロ昇格を祝うパーティがあったから行ったんだけど、そこにWeiger (Van Wagenigen)もいたんだ。Weigerのことを説明するのは難しいけど、彼は最高だよ。本当に良い奴で、人をからかうのも上手いんだけどさ、彼は単純に思っていることを口に出すんだ。Weigerは「サム!君がホモだって聞いたぞ!」ってみんなの前で大声で言ってきた。それから続けて「超クールだよ!超クールだ!すんごい大変だっただろ?」って言ってきた。それで僕は「そうだね、それについては上手く話せないけど」って返した。そしたら彼は「だろうね、俺だってチンポしゃぶる話はしたくないと思う!」って言ってきたよ。(笑)

Weigerの言ったことは間違いなく的を得てたからさ、みんなが笑ってたよ。変な感じだけど、これはちょっと良かった。カミングアウトで一番ぎこちないものの一つは、自分で自分を他の人たちから切り離してしまうことだと思うんだ。自分と、そしてその他の人たちってね。でもこのときは、僕はそのバーにいる人たちの一人にすぎないって感じだった。馬鹿みたいに聞こえるかもしれないけど、長い間秘密にしていたからさ、ただもう人に知ってもらいたくなっていたんだ。そうすれば次に行けるからね。だからパーフェクトだったよ。

みんな誰も気にしてなかったしね。Weigerは「今夜は君のカミングアウトを祝うパーティにしようぜ!」って言ってきてさ、みんなのところに行って「サムがゲイだって知ってた?」て言ってまわってた。Jerry Hsuのところにも「サムがゲイだって知ってた?」って聞いてさ、Jerryは「いや、まじで!?ヤバい!クールじゃん」って言ってくれた。ハイファイヴしたよ。

photo: sam mcguire

もしプロスケーターがカミングアウトしたとしたら、それは大事件だと思う?そのプロのスポンサーは気にすると思う?



それは会社やそのスケーターによるんじゃないかな。これはタフな質問だよ。これは政治と同じくらい、ビジネスの話だからね。ゲイだからって会社がそのプロスケーターをクビにすると思うかって言ったら、それはノーだよ。それは既になんとなく証明されてると思う。でも会社が表立って、ゲイの権利を主張したようなシューズを出したりなんかして、ゲイであることを前面に打ち出して行くかって聞かれたら、それはないと思う。だってビジネス的にそれがいいことかどうか分からないからね。

カミングアウトするのが誰なのかによると思うよ。もし、やっとメディアに露出し始めたようなニューカマーのマチュアだったら、分からないよね。たぶん僕は人々に過剰に期待しているのかもしれないけど、ここはスケートだからさ、スケートの会社はどこもみんな凄く前衛的だよ。だからみんながみんな、そんなに閉鎖的な考え方をしているとは思えないんだ。もしかしたらそうかもしれない、でも僕にはそう思えないんだ。

誰かが「このステア、ゲイだ」(訳注:スラングで「gay」を「ダサい」とか「キモい」などの意味で使うことがよくある)みたいなことを言ってるのを聞いたらムッとする?

昔はね。でも今は単純に笑える。今ではそういうことを言う人はそんなに多くないよ。何かに対して「ゲイだ」って言うのは、その人を馬鹿に見せるだけさ。それは僕から見てってだけじゃなく、他の人から見てもそうだと思う。それは双方向的なものだよ。どうしてそれ(何かに対して「ゲイだ」って言うこと)が人を傷つけることになるのかを、言う人はちゃんと理解することが大切だと思う。誰かがアイスクリームを落としたとして、「うわー超ゲイ!」って言うとするよね、するとゲイの人たちは誰でも無意識的に「僕は落ちたアイスクリームぐらい残念な存在なの?」って思ってしまう。だから「ゲイだ」って言うことは人を傷付けることになるってことを、人々はちゃんと理解しないといけない。みんながあれやこれやをゲイだって言ってるおかげで、僕は死にたいと思ったことがあるし、誰が自分の友達なんだろうって恐くなってしまったことがある。僕も年をとって少し大人になってからは、変化には時間が必要だってことと、辛抱するのが大切だってことが、なんとなく分かるようになったけどね。

photo: sam mcguire

最後に何か言っておきたいことってある?このインタビューを読んだ人には、どういうことを感じ取って欲しい?

もし今辛い思いをしている人がいたとしたら、少なくとも誰か一人でもインスパイアして、その人たちの状況を解決することの役に立てればと願ってる。こういったことはスケートの世界では常にタブーとされてきたけど、物事は変わって行くから、今は昔と同じじゃないと思いたい。人々がこのことを考えたり話したりするきっかけになってくれればいいし、もしかしたら(ゲイであることが)オープンになることに繋がればいいし、苦労している他の人たちの助けになれればいいなと思う。

何かいい格言だったり、引用だったりを知ってればいいんだけど、僕から言えるアドバイスは、周りに合わせることについてあんまり悩まなくていいよってことだね。スケートボーディングは環境にうまく馴染めないはみ出し者たちから生まれたと、僕は思ってる。ただ周りに合わせるなんて馬鹿げてるし、普通の人たちは超つまんないから、そんな周りに合わせようとなんてしない人たちさ。ハッピーに、自分らしく、そしてお望みとあらばところんゲイでいて欲しい。人生に挫けず、そしてスケートをあきらめないで欲しい。

2014年7月5日土曜日

KEVIN TIERNEY インタビュー

JENKEMに載ってた、KEVIN TIERNEYのインタビューです。

ってよく知らなかったんですが、ZOO YORKのAMなんですね。そして自分はまだ観てないすけどSTATIC 4でパートもあるらしいっす。

内容がけっこう面白くて、とくに保険の話なんかは、TPPで国民健康保険が壊滅させられようとしている今の日本にとっても人ごとではありません。

日本の健康保険は平等にみんなをカバーしてくれますが、アメリカだと保険にもグレードがあるらしく、いい医者にかかるにはハイグレードな保険が必要になるみたいです。そして高くね!?

民営化なんかされたら終わりですな。





photo: sean cronan


インタビューに臨むときは、普段はオープンマインドで偏見を持たないようにしているんだが、今回のインタビューに関しては、なんとなくケビンはきっと嫌な奴だろうなと思っていた。街中で2、3回会ったことがあったんだが、NYのスケーターでたまにいる、「クールな奴」のバイブスを感じたからだ。でも簡単な質問をいくつかした後からは、お互い構えずにリラックスできるようになって、彼も心を開いてくれた。
そして自立した育ち方や、膝の問題と家族の話を聞いて、俺のケビンを見る目が変わった。ほとんどのキッズには、人生の計画があらかじめ立てられているが、ケビンは自力で学びながら自分の人生を拓いていく必要があった。彼の話を聞くうちに、俺は彼に対して尊敬の念を抱くようになった。なるべく早く膝の手術をして、彼がスケートボードに乗ったときの本当のポテンシャルを、世界に見せつけて欲しい。
君は「クールな奴」じゃん?クールな奴になるための秘訣とかあったら教えて。
俺ってクールなの?それって悪い意味で?うーん、それについては何とも言えないな。でもクールな奴になるための秘訣?もしNYに来たなら、会うやつ全員シカトだね。「やあ」とか挨拶もしない。…で、ノーコンプライとかやるんだよ。ノーコンプライはかなりクールだからね。俺はフェイキーでも出来るようになったよ!ストレートなフェイキーのノーコンプライさ。かなりクールだよ。あとは、どっかでモデルでもやるとか?俺もそんなことできたらいいけど(笑)。何回かやったことあるよ!スケートのモデルさ。イェー!
ネット上で君の(スケート)スタイルはダメだなんて書かれてるけど、そういうのって気にする?
まじで?(笑)それは嫌だね。わかんないよ、俺はスケートに乗ってる感覚が好きなんだ。気にしないよ。もし俺のスタイルが気に入らないんなら、それはそれだけのことさ。鏡で自分の姿を見て、ああ、俺のスタイルってなんか狂ってるなって思うことはある。って言ってもどうでもいいけど。俺はスケートできる限りスケートを続けるだけだよ。好きか嫌いかさ!
君のスタイルを悪く言う人たちは、ほとんどみんな君の腕の動きについて言ってるよ。拘束着を着て腕を振り回すのを矯正しようかって考えたこととかある?
なんだよそれ!(笑)俺の腕はワイルドだろ?クソ、でもいっつも腕を振り回してるわけじゃないよ!腕の話って、Stuy Townのボードスライドのこと?あれって超長いボードスライドだぜ!あんな長いボードスライドを、楽勝な感じでやってるように見せないといけないのかよ?
photo: sean cronan
君はNY出身だけど、今までマーク・ゴンザレスと会ったり一緒にスケートしたことってある?
何度か会ったことあるよ。Steve Brandiと、彼がミルクセーキの店にいるとこを見つけたときがあったんだけど、そのとき俺は彼から絵を描くゲームをさせられたんだ。言われたお題を一発で描かないといけなくて、ミスったらダメ。四角の上に三角が乗ってて、真ん中にXがあるやつを一続きで描いてみろって言われたんだ。一度描いた線の上はもう線を重ねちゃダメ。何の脈絡もなくいきなりそんなこと言われたよ。狂ってるよ。マークは俺がどこの誰かなのかも知らなかったと思うけど、俺に絵を描かせて試してきたんだ。でもぶっちゃけファーストトライでメイクしたよ!
その後で、彼は消火栓を自分の板でぶっ壊そうとしてさ、俺の首くらいまである高い消火栓だよ。下のほうからありったけの力で、板で消火栓を殴りつけてた。まじでワケわかんなかったよ!(笑)ちょっと何してんの?って感じ。思わず後ずさったよね。新しい美術館の近くでさ、マークは美術館のガラスをウォールライドしようとして、キックアウトくらって怒鳴られてた。で、「そーか分かった、この消火栓を真っ二つにしてやる!」ってあのゴンズの声で言い返してさ。かなりヤバかったよ。
君のアートについて教えて。どうしていつも電車なの?
ずっと電車に乗って育ってきたからね。俺はクイーンズに住んでて街まで出るのに45分かかるからさ、その間にいろいろ考え事とかをするんだ。13歳のときから街に行くときは自分一人だし、電車に乗るってのは毎日のことなんだ。それに電車がずっと好きなんだ。酒飲んだ帰りに電車に乗ってクイーンズに帰るのは、ちょっとヤバめだね。間違いなく俺は寝ちゃうから、起きたらConey Islandとか適当な場所に着いちゃってて、帽子がなくなってたりとかするよ。
電車以外のものも描いてみようと思ったことはある?
ゴミ箱を描こうとしたことあるけど、あんまり好きじゃなかった。電車は好き。いろんな思いが電車にはある。
kevin’s train art / photo: zoo york
君は膝を痛めちゃってるんだよね?ほとんどの人は、君が膝を悪くしたままで滑り続けちゃってることを知らないんじゃないかな。
そう、ここ5年くらい、膝を痛めたままだよ。手術が必要なんだ。膝を新しく取り替えたいよ。すごくユルユルで弱いんだ。100%の状態には絶対にならない。滑るときは膝のことを考えないようにしてるけどね。スケートスポットでは、3時間くらいアップしないと、いい感じにならない。すぐに飛んだりとかできないんだ。スポットに着いた時点で、すでに膝を使いすぎてるような感じになったり、硬直してたりする。日によって違うから、撮影するときも、いつ調子がよくなるか分からないんだ。ゴムバンドでエクササイズなんかも始めて、膝を強くしようとはしてるよ。でもだんだんイライラしてくるから、あんまり長い間はエクササイズできない。すごい調子がいいと感じる日もあるよ。バックサイドの360を覚えたときは最高だった。でもオーリーすらできない日なんかもあるんだ。
スケートをキャリアとして考えるのはやめようと思ったことはある?
うん、そうだね。(笑)考えたことあるよ。膝がマジでやっかいだし、俺は医者も嫌いだからね。(NYには西海岸みたいに)「スケート・ドクター」がいないんだ。カリフォルニアにはスケートのトレーナーやスケートの外科医、医者がいるけど。こっちにいるのは自分が何の話をしているのかも分かってないようなおっさんさ。
俺が診て欲しい、良いって分かってる医者たちは、俺の保険を受け付けてくれないんだ。でも俺は保険に月々300ドル(約3万円)を払ってるんだよ。前に俺の膝を診てくれた医者はあんまり良くなかったと思うんだよね。90歳のじいさんだったし。だからそもそも最初から間違ってたような気がする。もし健康な状態でスケートできたら、それで完了なんだけどね。そしたら、中途半端なところで満足しなくてもよくなる。自分のSTATIC 4のパートを見たときは、「ちくしょう、もっと本当はできるのに」って思ったよ。
wallie / photo: sean cronan
酒を飲んだら顔が赤くなるほう?
ていうか、何をしても顔が赤くなるよ。何でなのか分からない。スケートすれば顔が赤くなるし、飲んでも赤くなる。セックスしても赤くなるし、ブロンズ色のTシャツ来ても顔が赤くなるんだ。わけ分かんないよ。
だから健康食品の店にいって、「ねぇ、俺の顔めちゃめちゃ赤いだろ、どうしたらいい?」って聞いてみたんだ。そしたら店の人から「アロエを買ってそれを毎晩顔に塗りな。少なくとも1ヶ月続けろ」って言われた。それで先週から始めてるんだけど、マジで唾を塗りたくってるような感じがするよ。恐竜の唾液みたいで最悪さ。めちゃくちゃ気持ち悪い。でも毎晩顔に塗ってるけどね。確かに効いてるみたいだし。切り傷や痣にも塗ってる。ドープだよ。
君って健康オタクなの?プロバイオティクスのドリンクや昆布茶を飲んでるの見たことあるけど。
ちょっとね。でも最近いろんなことを止めてみたんだ。違いを感じるかどうか見てみようと思ってね。で、なんだか同じで変わらない気がした。毎日緑のビタミンドリンクを飲んだり、フィッシュオイルやグルコサミン、フレッシュココナッツとかを採ってたんだけど、しばらく金欠のときがあって、そのへんを飲むのを止めてたんだけど、別に何も変わらないことに気がついたんだ。ビタミンを採って、それが健康にいいと思っていれば、健康に感じるもんなんだよ。もしマクドナルドを食ってても、ハッピーでネガティブなことを考えずにポジティブでいれば、全く同じように健康に感じると思うんだ。
しばらくは不安だったけどね。もしフィッシュオイルを採るのを忘れたら、一日をダメにしてしまうんじゃないかってね。でもそれから1ヶ月採らずにいて、そもそも俺には必要じゃなかったってことに気がついたんだ。膝を悪くしてからは、そういうメンタル的なことを実践してきたよ。膝のことは考えないようにして、大丈夫だって自分に言い聞かせるんだ。そうすると大抵は一日中大丈夫だよ。でも膝をひねっちゃったり、ちょっとでも痛みを感じたりすると、急に不安になって、あと数年で歩けなくなるんじゃないかって思ってしまう。浮き沈みが激しいんだ。


君の両親はどういう人たちなの?
両親のことはちょっと大変なんだ。正直、両親について話すのは好きじゃない。俺の母さんは精神病で、俺の親父はベトナム帰還兵だ。親父は糖尿病だし、13回も膝の手術してる。でも毎日起きて、自分のやることをやってるけどね。全体として親父はいい親だよ。親父からは「これをやったらダメだ」とかは一度も言われなかったけど、それにしては俺は素直に育ったと思う。悪いこととかやらないからね。母さんは月に一回病院に行って、電気ショック療法を受けてるんだけど、かなりハンパないよ。俺が家にいないで、常に外でスケートしてる理由の一つだね。俺は自分で何でも学んできた。すごく自立してるよ。兄貴がいるんだけど、33歳で一日中ビデオゲームしてる。別に仲は悪くないけどね。兄貴はチルってるだけさ。家にいないで、家のことは考えないようにしてるけど、難しいね。
お母さんの手助けとかしてる?
親父が母さんを月に一回、療養のために車で病院に送ってる。なんだろう、母さんはゆっくりしてて、たくさん薬を採ってる。時々、母さんは心ここにあらずみたいな感じになってる時がある。ハッピーそうだけど、会話が成立しない時があるんだ。もちろん、俺が母さんの息子で、俺が母さんを愛してるってことは理解できてるよ。
photo: sean cronan
自分がスケートを始めたのって、そういう大変な家庭環境からの抜け道だったからってとこある?
家庭の状況が、当時スケートを始めた理由なのかどうか分からないけど、振り返ってみると、そう思えるね。小さいころ、12、3歳のころは毎日一人で街に出てた。クイーンズってなかなか抜け出せないよ。俺はクイーンズに住んでたけど、基本的に街で育った。クイーンズにいたままだと、あまり生産的にはなれないと思う。
かなり自由な感じで育ってきたわりには、あまりトラブルにも巻き込まれずに済んでるね。
そうだね。自分でも不思議だよ。何かで罰を与えられたりしたこともないし、何かをするなって言われたこともない。正直言うと、宿題だって一度もやったことなんてないよ。だって、誰も俺に宿題を済ませろって言う人がいなかったんだからね。学校でも特に指導とかなかったから、成績はひどかったね。勉強する必要がなかったんだ。それでも75点、C+とかで卒業したよ。テストはたくさん落ちたけど。(笑)でも毎日授業には出てたから、先生たちからは好かれてたんだ。俺は問題児じゃなかったからね。
でも俺が好きだった先生は、たぶん刑務所に行くことになったと思う。彼はどの生徒とも仲が良くて、一番しっかりした人だったんだけど、生徒2人と3Pしてるのを発見されちゃったんだ。生徒の一人は女の子で、もう一人は男だった。二人とも17歳でね。先生はバイセクシャルだったと思う。実際に彼が刑務所に行ったのかどうかは知らないけど、間違いなくクビにはなったよね。でも彼は一番いい先生だったよ。彼からたくさんのことを学んだ。

自分がドラッグに手を出したり、グレなかったのは不思議だよ。両親ががんばって良い方に導こうとしてるのに、グレちまった奴をたくさん知ってる。俺はいつもいい子だったな。何でなのか分からないけど。正直言うと、昔はビビりだった。悪いこととかやりたくなかったし、俺はただスケートして自分のことをやりたいだけだったね。