2022年3月3日木曜日

ウクライナで何が起こっているのか?その2 by PLACE SKATEBOARD CULTURE

昨日の投稿のつづき、「ウクライナで何が起こっているのか?」のパート2です。元の記事が公開されたのは2022年2月22日です。

今回はロシア人スケーター、キリル・コロブコフのインタビューです。こうしたリアルな声はとても貴重だと思います。最後のほうなんてこの人泣きながらメール書いてたんじゃないかと訳しながら思いました。

今回も夫婦で訳しました。それではどうぞ。

The original article:https://place.tv/what-ukraine-2/


ロング・リードシリーズにようこそ。「ウクライナで何が起こっているのか?」昨日はウクライナのサーシャ・グロシェボイに、ハリコフの現地の状況を教えてもらった。その後もロシア大統領ウラジミール・プーチンが感情的な会見を行い、ルガンスクとドネツクが独立国家として承認され、ロシア軍が進軍するなど、様々なことが起こった。 

前回の投稿を受けて多くの反応、支援の声が届いている。また、ウクライナの分離主義者側の人々ともコンタクトが取れそうだ。 今はまだ何も決まってはいないが、この記事のパート3もあるかもしれない。 現場の状況は急速に変化している中、果たしてロシアの人々は何を考えているのだろう?

ロシアの人々はこの紛争のさらなる拡大が彼らにとって何を意味するのかを知っているのだろうか? 僕たち西側の世界は、ヨーロッパ全面戦争の可能性を受け入れる準備ができているのだろうか?これらの疑問に僕たちだけで答えるのはまだ難しい。そこでモスクワ在住のロシア人、キリル・コロブコフに意見を聞いた。キリルはただのロシア人というより世界市民といったタイプで、昔はヴァン・ワステルやケニー・リードと共に世界中を旅していた人だ。今回のインタビューもパキスタンから受けてくれた。 彼は世界中に友達がいて、世界の見方も偏っていない。 今のような時代、現地で実際に暮らす人々の声を聞き、何が起こっているのかを知ることは重要だ。 今は立場を問わず誰にとっても試練の時であり、この紛争が生み出すであろう犠牲者の方々のことを思うと心が痛む。

インタビュー、序文:  Roland Hoogwater.

写真: Barabakaa & Benjamin Markstein.


※インタビューに際し、キリルから以下の注意書きを入れて欲しいと頼まれた。

「これはあくまでも僕個人の意見であり、間違っているところもあるかもしれないけど、僕からは現状そう見えている」


やぁキリル、調子はどう?サーシャにもインタビューをしたんだけど、ウクライナについての報道はロシアではどんな風なのか聞きたかったんだ。戦争の話題で持ちきりになってる?

ロシアの公式メディアは、 戦争が起きるとしたら「アメリカとNATO諸国による敵対的な行動により、隣国同士であるロシアとウクライナの関係が悪化させられている」ことが原因だという。俺的にはすべてがジョージ・オーウェルのディストピア小説、「1984」を連想させる。ロシアのプロパガンダは例えば「黒は白」「戦争は平和」のように、真実とは異なる伝え方をして人々を撹乱することに長けている。だけどロシアではもう長い間そんなことの繰り返しで、国営メディアはもうそれ以上の新しい手法を持っていない。

今の危機を取りつくろうためにメディアでは、アメリカやNATOは悪とされていて、ロシアはあらゆる手段でそれに立ち向かっているとされている。そしてウクライナの政府はアメリカの操り人形になってるって。俺はまったく違う風に見ているよ。

クリミアを乗っ取ったのはウクライナじゃない。ウクライナの南東部で紛争を始めたのはウクライナじゃない。ロシアとの国境に10万人の軍隊を展開したのはウクライナじゃないし、国際条約 (ブダペスト覚書)に違反したのもウクライナじゃない。

俺が知る限り、それは全てロシアがしたことだ。そしてウクライナにとっての脅威とはロシアであって、その逆ではない。自国軍以外でロシアの侵略から国を守ることができるのはNATOだけだということを考えれば、ウクライナがNATOに参加することは非常に論理的だと思う。でもロシアとの紛争のリスクを考えると、NATOがすぐにウクライナを加盟させることも無いと思う。

ほんの数ヶ月前までロシアとウクライナの直接戦争なんてあり得ないって思っていた。今も戦争が起こらないことを願っているけど、それが起きる可能性も排除しない。プーチンはウクライナがとてつもない圧力にさらされている現状を楽しんでいると思う。

2014年にクリミア半島を併合して以来初めて、プーチンはジョー・バイデン大統領、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのオーラフ・ショルツ首相など西側諸国のトップからの直接の連絡や訪問を数多く受けている。この状況を作り出したおかげで、ロシアは国際社会の檜舞台に立てたよ。



モスクワでのキリル。
写真: Benjamin Markstein.


興味深いね。ストリートでも友達同士でこのことについて話したりするの?

俺の周りの大多数がこの戦争に反対なことが救いだよ。2014年のクリミア半島併合には賛成だった人たちでさえ、この戦争には反対なことが多いのが面白かった。

こんな戦争が起きれば、ロシアに対して新たな経済制裁が発動されて、今までとはレベルが違う厳しいものになることは目に見えてる。それによってロシア経済は近代史上最大の危機に見舞われるだろうし、生活水準は深刻なまでに低下するだろう。

ルーブルと、ほとんどのロシアの株式の価値はどん底まで落ちるだろうし、経済的損害を別にしても、戦争を始めること自体とんでもない責任を負うことになる。 それにウクライナ軍は過去8年間の経験を経て2014年当時よりも強力になっていると思うよ。

2014年の紛争開始以降、ウクライナの人々はドネツクとルガンスク人民共和国で”あちら側の”政府がどういうものなのかを見てきた。 彼らは全力を尽くしてウクライナを守ろうとすると思う。

教育を受けた賢い人たちは当然心配しているものの、このレベルの決定はクレムリンで行われいるということを皆理解している。つまり、ロシアが何をすべきか、政府が国民に意見を求めることはない。去年の反政府デモ以降、法律が厳しくなって大規模なデモをロシアで行うことはほぼ不可能なんだ。


2014年の以前の出来事についてはどう思ってる?クリミアの併合とか。

個人的にはクリミアのことも反対だよ。火事に遭った隣の家から自転車盗んでるような気分だ。 住民投票があったとしても、現地のクリミアの人々にロシアに戻りたいという傾向があったとしても、起きたことの後味は悪い。

俺個人としては、クリミアがウクライナの一部だった時の方がクリミアに楽に行けた。チケットを取ればすぐ行けたから。今はクリミアにいたことがウクライナ当局にバレたらウクライナに入国できなくなるから、気をつけないといけない。 それに制裁措置のおかげで、クリミア半島では国際的なサービスが機能しない。 例えばVisaやMastercardは使うのが難しい。リゾート業界は競争がなくなって、サービスの質は下がったのに価格は高くなった。 2014年の併合後、ロシアはクリミア半島の都市開発とインフラの整備にたくさん投資をしているけど、クリミアの人々は今でも色々な面倒を強いられてる。


現地では今の様子ってどう感じる?サーシャは、迫りくる危機のことは気にせず、戦争は起きると踏んでいる西側メディアの報道も無視して自分の生活を続けようとしていると教えてくれたよ。

俺たちはみんな危険地帯にいると思ってる。この重圧の中でどちらかが一歩でも踏み間違えるととんでもないことになる。現地でのロシアの軍事演習のことも心配だけど、世界中の誇張されたヒステリックな報道も意味がわからない。ブルームバーグは一時「ロシアがウクライナを侵略」なんて間違った見出しをウェブサイトに出していた。こういう間違いが致命的なんだよ。 戦争を始めるのは簡単だけど終わらせるのはとても難しい。この状況ではすべての立場の人が責任あるアプローチを心がけないといけない。

これから何が起こるかわからない。政治家はみんな狂ってると思う。ロシアもウクライナもアメリカも!ロシア国境沿いにはNATO軍がいるし。正直みんなクソ喰らえって感じ。ウクライナにもロシアにも普通の人たちが暮らしてるんだよ。戦争の中でなんか生きたくない人たちがさ。誰を何を信じろって?ニュースは全部嘘っぱちだよ。(笑)現地で何が起きてるかなんて誰も知らないんだ。


たくさんのロシア人が声をあげているよね。これはロシアの戦争じゃなくてプーチンの戦争だ、とか。でも一方で、ウクライナは昔からずっとロシアの国土だったとか言ってる人もいる。それはどう思う?

ロシアを旧ソビエト地域や東スラブ世界全体の中心として見たい人たちがいるのはわかってる。

俺はロシアには生活水準の高さや、都市や田舎での生活環境の良さで、隣国から慕われる国になって欲しい。  公平な警察、合理的な法律、科学的な成果、現代医学での世界貢献、そういったもので知られるロシアになって欲しい。世界中の人々が国籍や宗教を超えて自発的に協力し合っている姿を見たいけど、その理由がロシアが隣国に武器を向けて世界中の人を脅かしているからなんて嫌だ。暴力や武器を使って他人から良く見られることなんて無いよ。


キリル本当にありがとう、最後に言いたいことは?

ボムるのは国じゃない、ダウンヒルだけにしろ!



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